円空の衝撃

仏像を見て感動し涙が出たことはありますか?


仏像を好きになったきっかけのブログ記事にも少し書きましたが、
2006年東京国立博物館で行われた『一木にこめられた祈り』展では衝撃的な出会いがありました。円空仏です。


円空は江戸時代に存在した修行僧で、全国を行脚しながら数多くの仏像を作りました。彫った仏像は全国に12万体以上とも言われいます。円空の彫った仏像は「円空仏」と呼ばれ、一刀彫でデフォルメされた仏の姿と豊かな表情が特徴です。


『一木にこめられた祈り』展は一本の木から造られた仏像、すなわち一木造りを主題にした特別展で、博物館には全国から素晴らしい一木造りの仏像が一堂に会していました。その中の円空仏も事前に写真で見たことがありましたが、高校二年生の私には下手な仏像に見え、全く期待していませんでした。


当日、拝観が始まると真っ先に名品である向源寺十一面観音に向かいました。予想通り納得の素晴らしい仏像でした。他にも目移りするような展示内容で、終始落ち着かなかったのを覚えています。そして展示の後半、少し疲れてきた頃に円空の仏像が現れました。





何でもそうですが、実物を見ないと本当の良し悪しなんて分かりません。
私の下馬評とは別に、円空仏のまったく迷いが感じられない造形、豊かな表情に目を奪われました。

その中でも特に素晴らしく、自然に足が止まった仏像が岐阜県向賀神社『十一面観音・善女竜王・善財童子』です。十一面観音の微笑をたたえる慈悲深いお顔を見たとき、本物の観音様に出会ったように感じ、なぜか自然と涙が出ました。衝撃的な体験でした。


この三尊はすべて同じ大きな木材から彫り出されていて、三尊を向い合せると一つの丸太のようになります。円空は水害で母を亡くしていて、一説には善財童子が円空を、善女竜王が水害で亡くした母を意味し、自分と母が十一面観音に抱かれ、今生でなしえなかった思いをあらわしているといわれています。実際、三尊が合わさるとき、善財童子と善女竜王の二尊は十一面観音の台座に乗るような形になり、慈悲深い十一面観音様に抱かれているようになります。わかりにくいと思うのでぜひ写真を検索してください。


十一面観音の微笑に感動したのは、円空の求めた救いが十一面観音の表情に現れていたからかもしれません。本当にモノはよりしろなのだと思います。





先日、十一年ぶりにその三尊と再会しに岐阜へ行ってきました。今回は博物館ではなく現地で。もし久しぶりに拝観して感動しなかったら、何も思わなかったらどうしようと不安な気持ちもありましたが、結局杞憂に終わりました。やっぱり素晴らしかった。

仏像に限らず、なんでも実物を見るまで本当の良さは分からないものです。奈良にも円空仏が残されています。是非拝観してください。


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